2015年2月に出版された「人を操る禁断の文章術」。
著者は読みやすい文体でおなじみメンタリストDaigoさんですね。
このライティング本では、「文章を書く目的とは読み手に想像させて行動を促すことだ」と主張されています。
そのため、相手が思わず行動したくなるように想像させるテクニックがびっしり解説されていました。
今回はセールスライティングにも役立つ書籍「人を操る禁断の文章術」を要約してみました!
「人を動かす文章」は3ステップで書くことができる
書籍「人を操る禁断の文章術」の全体像を見ると、第1〜4章で解説されています。
- 1章「文章が持つ力について」
- 2章「人を動かす文章に共通する3原則」
- 3章「読み手の感情を揺さぶる7つのトリガー」
- 4章「読み手の心を自在に操るためにすぐ使える具体的な5つのテクニック」
このうち、第1章は「文章でしか表現できない力」について解説されているため、ライティング初心者にとっては為になるポイントです。
第2〜4章では「人を動かす文章を書くポイント」が述べられています。
つまり
- 1章が序論
- 2章がステップ①
- 3章がステップ②
- 4章がステップ③
として解説されています!
ステップ①「書かない」3原則を唱える
文章の基本は「余計な文章を書かないこと」。そのためのポイントが3つ挙げられています。
- あれこれ書かない
- きれいに書かない
- 自分で書かない
ステップ②7つのトリガーから選ぶ
7つのトリガーを使うと文章の説得力が上がります。
- 興味
- ホンネとタテマエ
- 悩み
- ソン・トク
- みんな一緒
- 認められたい
- あなただけの
ステップ③5つのテクニックで書く
次の5つを意識するとメールやメモで人を動かすことができます。
- 書き出しはポジティブに
- 何度も繰り返す
- 話しかけるように書く
- 上げて、下げて、また上げる(上級者向け)
- 追伸をつける
参照:「人を操る禁断の文章術」
【人を操る禁断の文章術】文章の心得
ここで第一章に入る前に、文章の心得とも言われるポイントをピックアップします!
●文章とは、読まれるために書くのではなく、行動させるために書く
参照:Daigo著「人を操る禁断の文章術」
●文章を読んでもらえる条件は、相手の興味を探って心に刺さる言葉を盛り込むこと
●文章は読者の心を動かし、想像力を使ってもらうために書く
●「自分が何を伝えたいか」ではなく「読者にどんな行動をして欲しいか」で考える
●どのように書けば読み手が「そうしてもいいかな?」「自分にしかできない」「いま買わないと損だ」と思うかを考える
それでは第1章を簡単に要約していきたいと思います!
【第1章】文章が持つ力について|想像させる伝え方
「人を操る禁断の文章術」では、文章を書く目的を次のように答えています。
「文章は相手の行動を促すために想像させるように書く」
次の例が一番分かりやすく挙げられています。
Q.「あなたが思う世界最高の美女とは?」
これは、「実際に美女を見なくても誰もが世界最高の美女を思い浮かべられるフレーズ」と紹介されており、これが文章でしか伝えられない魅力だと初心者の方にも分かりやすく解説されています。上の例は試し読みからでも確認できますよ!
なかでも冒頭にあった「あなたの思う世界最高の美女とは?」の伝え方は、ワンフレーズのみで理想の美女を想像させられるため、とても良い例として挙げられています。
「想像してみてください。あなたの目の前に、目もくらむような美女がいることを」
引用:人を操る禁断の文章術
すべての人にとって理想の美女は、映像ではなく文章でしか表現できないと主張されています!
文章の目的は「今すぐ人を行動させること」
「人を操る禁断の文章術」では、自動車店のセールスマンが使っている想像力を刺激する言葉が紹介されています。
「この車でどこへ行きたいですか?」
「この車に誰を乗せたいですか?」
このように言葉を掛けられると、「自分が車に乗るならどんな場面になるだろう」と想像しやすくなり、試乗会があれば「行ってみようかな」と思いやすくなると言われています。
人は想像すると行動を起こしやすくなるのです!
買うつもりがなかった商品を衝動買いさせた文章
「人を操る禁断の文章術」では、大型販売店で意外な商品を売り上げた事例が紹介されています。
販売員は紙オムツ売り場に「今しか見れない姿、残しませんか?」と文章を掲示して使い捨てカメラを陳列し、その売上を大幅に上げました。
このキャッチコピー(今しか見れない姿、残しませんか?)を目にした買い物客は、自分の子どもが展開している数々のドラマを思い出し、それをカメラで撮る自分を想像します。
「我が子のかわいい姿を残したい」という日常の中に紛れた自分の「欲求」に気づいたのです。
買い物客はたった1行の文章によって日常から非日常へと連れ出され、商品説明もないまま紙オムツと使い捨てカメラを買い物カゴへ入れたのでした。
参照:「人を操る禁断の文章術」
ヒトは想像力のスイッチを入れられると、あとは勝手に行動へと移してしまう。
文章はそのスイッチを押すための道具に過ぎない。
第1章は「想像させる書き方」についてまとめられていました!
【第2章】書かない3原則で人を動かす
「人を操る禁断の文章術」第2章では、人を動かす文章に共通する「書かない3原則」について解説されています。
- あれこれ書き過ぎない
- きれいな文章を書こうとしない
- 自分が書きたいことを書かない
この原則を知ると、文章を書くときの「3つの誤解」に気付くこともできます。
それぞれポイントを押さえました!
書かない原則①「あれこれ書き過ぎない」
人は受け取った情報が足りないとき、想像や予測をして判断する習性があるようです。
「人を操る禁断の文章術」では、この習性を利用する方法が解説されています。
文章を書くときにあえて情報量を少なくすると、読み手の想像力を利用できるのです。
つまり、読み手が都合良く想像できるように「隙」や「余白」を残している文章が理想的と言われています。
また、このことが文章を書くときの誤解①として挙げられています。
文章は、伝えたいことを並べたり詳しい情報を与えて十分な説明であっても心が動くものではない。
いつも正確に伝える必要はなく、相手に合わせて情報量を調節することが重要。
書かない原則2「きれいな文章を書こうとしない」
なぜ、きれいな文章を書こうとしてはいけないのか。
その理由は、感情を揺さぶるような文章を書くためと説明されています。
まじめに文章を書くほど気持ちがこもりにくくなり、「きれいな文章=表面的な文章」となってしまう傾向があります。
文章を書くときに優先すべきことは、個人的な思いや背景が盛り込まれた文章です。
そこに相手との共通体験などを盛り込み、読み手の心と結び付ける言葉が必要になります。
(「飲みの席での何気ない会話の続き」「相手が関心を持っている出来事」「家族の近況」など)
これさえあれば相手の心に刺さりやすくなりますが、逆にこのコツを知らないと「失礼がないように自分の評価が下がらないように」と、きれいな文章を書こうとしてしまいます。
また、このことが文章を書くときの誤解②として挙げられています。
「きれいな文章を書かなくてはいけない」と思うと、自分の感情を抑えてしまう。
こちらが感情を抑えてしまうと鏡のような効果が生まれ、相手の心から湧き上がってくるはずの感情をも押さえつけてしまう。
書かない原則3「自分で書こうとしない」
文章で書くべきことは相手の心の中にあります。自分で考えるのではありません。重要なのは「読み手の心を掴むこと」です。
誰が読むかを考え、読み手側の情報を集めているかにかかっています。
これが文章を書くときの誤解(3)です。
多くの人は、自分が読ませたいことを書こうとするばかりで、読み手をあまり意識していない。
【第3章】人を動かす7つのトリガー
ここでは、「人を操る禁断の文章術」で紹介されている「人を動かす7つのトリガー」を要約しています。
「7つのトリガー」とは、人間の欲求が潜んでいる分野が7つに分けられることから、「人を行動に移させる7つの引き金(ポイント)」のことを指しています。
- 興味
- 本音と建前
- 悩み
- 損得
- みんな一緒
- 認められたい
- あなただけの
この7つは状況に応じて組み合わせると、相手の行動を自分の思い通りに導く効果があるようです。
それぞれのポイントを押さえていきたいと思います!
「7つのトリガー」を使うポイントとしては、事前に相手を観察しておくことが重要と言われています!
トリガー①興味
人を動かす7つのトリガー①は「興味」です。
これは、相手が何に興味を示しているかについてフォーカスすることを指しています。
相手が普段使っている言葉や反応しやすいフレーズを文章に散りばめると、読んでもらえる確率がグンと上がるため、相手の注意を引きやすくなります。
一度も会ったことがない相手の興味を把握する
相手の興味を把握するには、「相手の趣味、お金の使い道、言葉の使い方、どんなタイプの友達がいるか」など、SNSやインターネットなどから探るのも一つの手段だと著者は解説しています。
また、相手がSNSを利用していなかった場合でも相手の興味を調べる手段がいくつかあります。
- 相手と同じ業界で働いている人のSNSを見る
- 相手の出身地や今住まわれている周辺地域の特徴を調べる
- 相手の趣味が分かっていれば、それについてまとめられた雑誌などをチェックする
- 最近のトピックを知っておく(それだけでも人を動かすキーワードが見えてくる)
参照:人を操る禁断の文章術
このように、事前に相手を観察して調べることは「ホットリーディング」と呼ばれます!
もし会ったことがある人なら、相手が自身の興味を話したときにメモをしておくのも良いでしょう。
そこで得た情報をお礼や連絡メールに忍ばせるだけで、相手との距離がぐっと縮まっていくはずです。
「興味」というトリガーを利用すれば相手の心が動き出す。相手の興味や関心事を探っていくことが成功のポイント。
トリガー②本音と建前
人を動かす7つのトリガー②は「本音と建前」です。
人は誰でも本音と建前を持っていると言われています。
例えば次のような例です。
- 建前:アパートを購入するために節約して貯金している
- 本音:だけど、たまには気晴らしがしたい
この本音と建前の間にあるのが、理想(こうありたい)と現実(こうあるべき)の狭間で揺れる感情です。
このギャップが大きくなるほど人を動かす強いエネルギーに変わるのですが、そのとき強いフックとなるのが「建前を認めてほしい」という欲求と言われています。
建前を認めてあげると、その人は認めてくれた相手を信頼して本音を話す傾向にあるようです。
そのようにするためのポイントは、相手の「本音」を推測し、「建前」を取り払って認めることです。
次で詳しく解説しています。
信頼される人は「本音」と「建前」を上手く使う
「人を操る禁断の文章術」では、トリガー②「本音と建前」を解説できるように次の例文が挙げられています。
(例文)上司からの大量の仕事を断りきれない状態の同僚にあなたが次のように声をかけるとどうなるでしょうか?
✕「最近、あれもこれも抱え込んで大変そうですね。1つや2つ断ったって○○さんの現状を見たら誰も文句言いませんよ。ホント、頭が下がります」
◎「○○さん、本当にお疲れさまです。私も以前、同じような状態になったことがあり、毎日、終電続きでヘトヘトになりました。本音を言えば、もういい加減、断りたいところだと思います。でも言えないのがサラリーマンのつらいところですね。お手伝いできることがあったら気軽にメール下さい」
引用:「人を操る禁断の文章術」
(解説)前者のように声をかけられた相手は、「心配してくれてありがとう」といった返事をしてくれるはずですが、それは建前の可能性があります。
心では苦笑いして「やってられないよ」「頭下げるなら半分手伝ってよ」といった本音を隠しているかもしれません。
その結果、声をかけられたほうは建前で受け流しながら本音は出せないため、さらにしんどい思いをしてしまいがちです。
ここでトリガー「本音と建前」の出番となります。
もし後者のような伝え方をした場合は、2人の距離がぐっと近づくはずです。
先ほどにもありましたがポイントは、相手の「本音」を推測し、「建前」を取り払って認めることです。
それでは先ほどの例文において「本音と建前」が何であったかを挙げてみます。
- 建前(現実ではこうあるべき)
→上司から仕事を振られた以上やるしかない - 本音(理想ではこうありたい)
→次々と舞い込む仕事を断りたい
この「本音と建前」の間で揺れている相手の感情を見抜き、自分がそれに共感していることを伝えて、手伝うことを申し出る。
本当に手伝うことになるかどうかはさておき、このステップを踏むだけで相手からは「信頼できる」「いい人」と思われやすくなるようです。
相手の抱えている問題(建前)を認めて、その苦悩に共感しながら本音を認めてあげる。
なお、建前を触れずに本音から入ってしまうことはNGとして挙げられています。
相手の本音を見抜くだけではなく、建前まで見抜くと強く人を動かせると言われています!
本音と建前の間に隠されたすさまじい欲望を利用する
「本音と建前」のトリガーは、広告の文章などでよく使われます。例えば、食洗機の広告コピーとして次のようなフレーズが紹介されています。
「がんばるママの手が、悲鳴をあげています」
「年中、手荒れに悩むママに朗報です」
引用:人を操る禁断の文章術
炊事洗濯が苦手でも、多くの人は建前として「その役割を担っていかなければ」と思い頑張っています。この食洗機の広告コピーは、そんな女性たちの建前を認め、手荒れという切り口で働きぶりに共感しながら、できれば洗い物の負担を軽くしたいという本音に働きかけているのです。
「本音と建前」のポイントは、「こうあるべき」とされる建前の部分と「こうありたい」と思う本音とのギャップにあります。
このギャップに相手の心を動かすエネルギーが詰まっているため、ここにハマるような内容を文章で示して行動させるといったイメージを持つと良いとされます。
建前:主婦として家事はきちんとこなす
↑
ギャップ:家族と過ごす自由な時間も手に入る食洗機です(広告)
↓
本音:もう少しラクしたい、時間も欲しい
(解説)朝から晩まで炊事洗濯に追われている女性は、家族のためだからがんばれる。でも、本当は学生時代のようなつるつるした手に戻りたいし、肌荒れもなんとかしたい。負担を軽くして、ゆっくりできる時間をつくりたい。
こうした不満やストレスを文章によって認めて受け止めることで、本人が理想としている在り方に近づくことができます。
相手に理想の状態を自覚させて行動を促す(購入してもらう)ための文章が広告コピーの役割です!
このコピーを見た女性は家族に対して本音を明かさずとも、手荒れという建前を使って商品の購入を迫ることができます。
重要なのは食洗機のアピールではなく、それを使う人の建前を認めて、本音に入って行くことです。それが上手くいくと購入を検討させる力が発揮されると言われています。
相手の本音(理想)と建前(現実)のギャップに心が揺さぶられるエネルギーが詰まっている。理想に気づかせて行動したくなるように促す。
トリガー③悩み
人を動かす7つのトリガー③は「悩み」です。
「人を操る禁断の文章術」では、「悩み」が人の心を動かす大きなフックになると主張されています。
人間の悩みの9割は「HARM」の4文字に集約されているようです。
HARMとは「Health」「Ambition」「Relation」「Money」を表しています。
- Health
健康、ダイエット、外見、病気、加齢など、心身にまつわるもの。 - Ambition
野心や大望という意味ですが、ここでは将来の夢や叶えたい希望と解釈されている。例えば理想の仕事や出世したい願望など。 - Relation
人間関係。 - Money
お金にまつわる悩み。
そしてHARMに「世代」を掛け合わせると、まるで占い師のように相手から反応を引き出せるようです。
「Health × 世代」の例
例えば、「Health(健康の悩み)× 世代」であれば次のようになります。
- 10代:ダイエット、身長、肌荒れなど外見にまつわるものが中心。
- 20代:仕事のストレスによる不調や肩こり、腰痛といったトラブル。
- 30代:女性は出産について考える年齢に差し掛かる。男性なら体力の衰えや薄毛、肥満など。またフィットネスや健康食品などへの関心が高まる。
- 40代:内科系の病気への心配が増え、ガン保険などに目が行く。
- 50〜60代:まさに健康の悩みが中心の世代。
参照:人を操る禁断の文章術
HARMに加えて、世代によって言葉の使い方を少し変えると、相手の心に刺さりやすくなります!
「Ambition × 世代」の例
「Ambition」(夢や希望)の例として、将来の夢をフックに雑誌の特集をつくるなら、次のようなイメージが挙げられています。
- 10代:「受験だけが全てじゃない。そう思ったら夏の短期留学」
- 20代:「内定者の83%が来場した適職フェア」
- 20代(就職後):「キャリアアップのための転職プラン」
- お金の悩みも増え始める30代:「同窓会、この中には2人は年収1000万円!?」
- 出世のイスが限られてくる40代:「部長になれる人の習慣」
参照:人を操る禁断の文章術
「Relation × 世代」の例
「 Relation(人間関係)」も書き方は同じです。
例えば「結婚」をテーマとしてトリガーに決めたなら、読み手の世代に合わせ、どんな悩みを抱えているかを想像しながら書き出します。
- 10代:まだ結婚へのリアリティが乏しいため、悩みではなく理想像をアピールしたほうが刺さるかもしれない。
- 30代:婚活への焦りも出始めるため、アピールポイントは年収よりも、趣味などの共通点の大切さが考えられる。
- 結婚したばかりの30代、40代:価値観の違いや新婚生活での驚き、「この人で本当に良かったのか?」といった要素が刺さる言葉として考えられる。
- 40代:結婚の悩みとしてセックスレスや「家庭に居場所がない」など、結婚生活への不満へとシフトしていくことが考えられる。
参照:人を操る禁断の文章術
- 10代 恋に恋する
- 20代 恋人
- 30代 結婚、子ども
- 40代 子どもの進路
- 50代 夫婦関係
- 60代 定年後の暮らし
「Money × 世代」の例
「Money」(お金)をトリガーとした例です。
20代:シンプルに自分のために使えるお金を増やしたい。お金の使い道は余暇が中心。
30代:キャリアップへの自己投資など少し仕事寄りになる。結婚資金や不動産の購入なども問題になってくる。
40代:住宅ローンや子供の教育資金といった大きな金額についての悩みが増える。
50代:老後の資金が視野に入る。
世代による変化の流れは、年齢と共に自分に焦点が当たっていた「お金」が配偶者や家族へとシフトしていき、最後にまた自分へと戻ってくるイメージです。
- 10代 小遣い、バイト
- 20代 自己投資、貯金
- 30代 マイホーム
- 40代 教育費
- 50代 老後
- 60代 年金
世代別の悩みに関しては様々な統計データが存在しますので、ネット検索の活用も一つの手段として考えられています!
人の悩みはHARMに集約されている。年齢を知るだけで人間の悩みは大別できる。相手の悩みを見抜いて解決策を文章で示すと誘導しやすくなる。
トリガー④損・得
人は、「自分が得することよりも損することに大きな影響を受ける」という心理があります。
そのため、多くの人が「無料!」という言葉に心が奪われやすいです。
(例)
「学生は機種変がタダ!」
「もし満足いただけなければ全額返金いたします」
「損失による心の痛み」は「利益の喜び」よりも大きいとされているため、損失が避けられることが分かると得した気持ちになるのです。
期間限定の返品サービスが持つ効果
「人を操る禁断の文章術」では例として、アメリカのデパートで行われた「5年返品無料サービス」が挙げられています。
これは5年以内なら商品を返品できるというサービスです。じつは、返品期間を長くすればするほど、返品率は下がっていくデータがあります。「いつでも返せる」という安心感から購入し、いざ月日が経つと、商品が気に入らなくても「返品が面倒」という心理が働くようです。
つまり「5年返品無料サービス」は、お客様の心の動きを先回りして「買ってもリスクはありません。無料ですから買いやすいですよね」と囁きかけているのです。
この手法は、「リスクリバーサル」と呼ばれます。
まさに言葉の力だけで顧客の心を購買へと傾けているのです!
こうしたリスクリバーサルを使った「無料で安心」というキャンペーンの手法を文章術に応用したトリガーが「損・得」となります。
「買うと得します!」よりも「買って損はしませんよ!」が効果的。
ワケあり商品に惹かれてしまう理由
人を動かすトリガー④「損・得」は、心理学用語の「片面提示」と「両面提示」を応用した説得法でもあります。
「片面提示」とは、メリットだけを伝える方法です。
「両面提示」とは、メリットとデメリットをどちらも伝える方法のことです。
片面提示は、得だけをアピールして気持ちを後押しする方法です。例えば、「このカメラが欲しい!」と指名買い希望のお客様に対して、「高画質でコンパクト。手ブレにも強く、運動会でお子さんを撮るのに最適です」「今なら、お安くしますよ!」と畳み掛けるようなイメージとなります。
ただし片面提示にはデメリットがあります。それは、良い事づくめでリスクの説明がない分、信憑性に欠けて怪しくみえてしまうことです。
両面提示は、物事の良い面と良くない面を均等に伝えることで、物事を疑ってかかる慎重な人やその商品に対する知識を持っている人の信頼を得る方法です。
相手はデメリットを知ることでこちらを信頼してくれ、さらに「こういう部分は良くないんだ」と納得してくれます。その上で決断させれば、その人は自分の決定に満足し、気持ちよく購入に動いてくれることになります。
「ワケあり商品」は、まさに両面提示のコピーと言えます。
「こんなワケで見栄えは悪いですが、安くてうまい」
「こんなワケでまとめ買いすると、お買い得」
「損」と「得」の両面を提示して相手を惹きつけていくのです!
デメリットを利用して信頼を勝ち取る方法
両面提示で重要なのは、ネガティブな情報を先に提示したあとで、ポジティブな情報を伝えるという順序です。
つまり、先に「損」を示して、後に「得」を伝えると効果的となります。
仮に、ネガティブな話を最後に持ってくると、相手の心に後ろ向きな印象が強く残ってしまうので、いくらメリットを盛っても心は動きません。
先にデメリットを淡々と並べて、それを上回るメリットとともに締めくくると良いとされます!
基本的には、「こういうところが短所ですが、こういう長所もあります」といった伝え方が効果的です。
○「私が今回推薦する●●は、とても有能で、社内での評価もトップクラスです。ただ、『まだ若すぎるのでは?』と思われるかもしれません。けれども若い分、これからの成長も期待できます」
引用:人を操る禁断の文章術
長所を最後に伝えられると「親近効果」と呼ばれる働きが生じて、相手の心にはポジティブな印象が強く残ります。
正直にデメリットを書くと、信頼が得られる。
デメリットを上回るメリットで最後を締めくくる。
トリガー⑤みんな一緒
人を動かすトリガー⑤は「みんな一緒」です。
「みんな一緒」は社会心理学用語で「社会的証明」に当てはまります。
簡単にいうと「みんながしていることは正しい」といった心理です。
人は決定に迷ったとき、周囲の人たちを観察して同じ行動を取ろうとします。場の空気を読むこともそうです。
「みんな」というキーワードは、人を行動に駆り立てる強力なトリガーです。
「あなた、まだスマホじゃないんですか?」
引用:人を操る禁断の文章術
「すでに100万人の方が体験済みです」
「同期の○○さんは、もう始めていますよ」
トリガー「みんな一緒」のポイントは、読み手が「一緒になりたい」「帰属したい」と思っているカテゴリーを知ることです。
また、誰と一緒になりたいかという「憧れ」や、また誰と一緒になっているかという「共通点」を観察することも挙げられます。
あるカテゴリーに帰属したいと感じている人たちが、自分たちにピッタリの言葉に出会ったときに集まってくることもトリガー「みんな一緒」の力です!
他にも、相手がアップル製品が好きでスティーブ・ジョブズを尊敬している場合は、ジョブズの名フレーズを文章に忍ばせると効果的と言われています。
「自分だけ乗り遅れるかも」という恐怖が人を駆り立てる
人は、自分だけが集団から遅れることを恐れるため、自分に近い人の意見により強い影響を受けます。
例えば「人を操る禁断の文章術」では、「あなた、まだスマホじゃないんですか?」という広告を例にして解説しています。
広告のモデルが剛力彩芽さんで、「えっ、先輩、まだスマホじゃないんですか」というキャッチコピーだった場合、これはスマホへの変更を前向きに考えている若い人たちに響くメッセージとなります。
一方で50〜60代は「先輩」という呼びかけが示す「みんな」が、自分だとは思わないのでスルーしてしまう傾向にあり、気に留めたとしても「スマホは若い人のもの」という思いを強くするくらいだと考えられます。
ところが、スマホを片手にした笑顔の大竹しのぶさんがモデルとして、「若い時に見られた、あれが現実になりました。一緒に始めてみませんか?」と書かれていた場合、「スマホに興味はあるけど、なんだかわからん」といった中高年層は興味津々。
じつはスマホが欲しかった自分に気付くことで、購買につながるかもしれません。
参照:人を操る禁断の文章術
他にも、「○○%の人が○○しています」という書き方が「みんな一緒」のキーフレーズが使われています。
「ご存知ですか?30代の人たちの75%が家を買おうと考えています」
「みんな一緒」の書き方のポイントは、世代やカテゴリーなどを観察し、先回りして刺さるフレーズを指示することにあります。
例えば、香川県出身だと分かった人に「お昼休みにうどんを何店か食べ歩くという話を聞いたんですけど、本当ですか?」と聞くと、「本当ですよ。よく知っていますね」と盛り上がる。
このように「特定の集団が持つ特殊な習慣」に触れていくのは良い方法だと解説されています。
こうした場合、トリガー「みんな一緒」はお互いの距離感をぐっと縮めてくれるように働きます!
読み手が所属したいカテゴリー(憧れ)、すでに所属しているカテゴリー(共通点)につなげてメッセージを訴求しよう。
トリガー⑥認められたい
人から認められたいという「承認欲求」は消えることがないため、付き合っていかなければならない強い感情だと言われています。
トリガー「認められたい」を使うポイントは、文章の中に「相手を認める言い回し」を入れることです。
「私はあなたのこんなところがすごいと思っています」と伝えるだけで、相手の心をグッと掴むことができるのです。
上司を思うままに操る方法!?
「人を操る禁断の文章術」では、自分が課長として後輩を飲みに連れて行った場合、その翌朝に後輩からお礼のメールが届いた状況を例としています。
例①
✕「課長、昨日は楽しい時間をありがとうございました。またよろしくお願いします!」
○「課長、昨日はお時間いただき、ありがとうございました。自分はあんなに敷居の高いバーに行ったの、じつは初めてでした。またよろしくお願いします!」
例②
✕「課長、昨日は楽しい時間をありがとうございました。またよろしくお願いします!」
○「課長、昨日はお時間いただき、ありがとうございました。●●課長のご経験に基づいたアドバイスがいただけて、仕事に対するとらえ方が変わりました。また、いろいろと教えて下さい!」
どちらも悪い気はしませんが、グッと来るのは後者だと挙げられています!
後者の方が良いとされる理由は、「認められたい」欲を刺激するキラーフレーズ「こんなの初めて!」「(あなたのおかげで)変わりました!」が入っているからです。
若手の「初めてでした」には、「あんな敷居の高いバーを知っているなんて、すごいですね」「いつもああいう店で飲んでいる課長はかっこいい」「憧れます」など、いくつもの「あなたのことを認めます」という要素が込められています。
同じく「変わりました」には、「課長の深さに驚いた」「経験値からくるアドバイスが役に立った」「頼りになります」「影響を受けました」など、いくつもの「あなたのことを認めます」という要素が込められているのです。
「○○できる人、初めてみました!」
「アドバイスのおかげで、悩みへの向き合い方が変わりました」
「こんなに親身になって相談に乗ってくれる人は、初めてです」
など。
「こんなの初めて!」や「変わりました」は、相手の「認められたい」を大きく満たす効果があります。
相手の年齢がいくつでも「初めて」や「変わりました」は、「認められたい」という欲求に刺さります!
「初めてです」「変わりました」といった相手を認めるキーワードを文章に盛り込み、承認欲求をくすぐると、相手は喜んで動いてくれる。
トリガー⑦あなただけの
人を動かすトリガー⑦は「あなただけの」です。
「○○さんだから打ち明けるんですが…」
「このことは、誰にも言わないでください」
「読んで頂いている人たちだけのチャンスです」
「あなたの誕生日をお祝いします」
など。
人は「あなただけ」という設定に弱いため、心がぐいぐい動かされてしまいます。
特に、「あなただけにご用意しました」といったフレーズに加え、そこに希少性(数が少ない、珍しい)が加わると最強だと言われています。
例えば、「○○さんだけに、先に伝えておくね(特別感)と書き出しつつ、終わりに「まだ部長にも報告していないから内密に(希少性)」とあったら、内容はどうあれ、そのメールはものすごく貴重なものに感じられるはずです。
なぜならこれは、「あなただけ」に加えて、情報が「限定」されているからです。
人は数量限定よりも情報の限定に弱い
限定が価値に影響を与えることは、さまざな心理学分野で実証されています。
ある心理学の実験があります。
AとB、2つの瓶を用意し、Aにはクッキーを10枚、Bには2枚いれます。つまり、数を操作することで希少性をつくっているのです。
すると、AとBの両方を食べた被験者に「また食べるとしたら、どちらを選びますか?」と聞くと、必ずBが選ばれるのです。
参照:人を操る禁断の文章術
つまり人間は、あったはずのものや持っていたものがなくなりそうになると、心が煽られてしまうのです。
この理論に裏付けされている実践例としては、「限定販売」や「在庫僅少」「本日限り」など、またヒットしても大量生産しないことで価値を高めるブランド商品が挙げられます。
あるいは、セールスメールのタイトルが次のようであれば、ついクリックしてしまうかもしれません。
○「プレセールのお知らせ。バーゲン開始72時間前から半額です。ただこの情報は、当店での購入回数が5回以上の特別なお客様にのみお知らせしております。一般のお客様には公開されておりませんので、ご内密に」
参照:人を操る禁断の文章術
ただ「あなただけへのお買い得」ではなく、情報そのものが「あなただけ」。この二重の限定ぶりが、圧倒的な力で読み手の心を動かすのです。
あったものが規制・制限されると欲しくなる。持っていたものがなくなると欲しくなる。
【要約まとめ】人を操る禁断の文章術
4章以降はこちらで要約しています!
1章「文章が持つ力について」要約まとめ
人は想像力のスイッチを入れられると、あとは勝手に行動へと移してしまいます。
したがって、想像させるように文章を書くことがポイントです。
2章「書かない3原則」要約まとめ
原則1「あれこれ書かない」
内容を詰め込んだ長文はすぐ飽きられる。狙いを1つに絞り、あえて短文にすることで読み手の想像力を利用する。
原則2「きれいに書かない」
美しいだけの文章、表面的な文章では心を動かせない。感情を込めた文章で読み手の想像力を刺激し、感情を引き出す。
原則3「自分で書かない」
自分の中に答えはない。相手の読みたい内容、求めている言葉を探ること。それを提示できれば人を動かすことができる。
3章「7つのトリガー」要約まとめ
トリガー①興味
人は退屈を嫌い、夢中になれることには時間を忘れる。興味に触れれば、勝手に行動してくれる。
トリガー②本音と建前
人は本音と建前を行き来しながら生きている。その狭間に、突き動かされるエネルギーが詰まっている。
トリガー③悩み
人は悩みやコンプレックスを解消したいと思っている。悩みが解決できるとわかれば、必ず行動する。
トリガー④損・得
人は「得したい」思いより「損したくない」思いのほうが強い。「損しませんよ」と安心させれば、行動させやすくなる。
トリガー⑤みんな一緒
人は自分の所属しているカテゴリーから外れることを回避したがる。また、自分と共通点を持つ人に、強く影響される。
トリガー⑥認められたい
人は認めてもらわなければ生きていけない。プライドをくすぐれば、前のめりで読んでくれる。
トリガー⑦あなただけの
人は持っているものがなくなりそうになると激しく渇望する。また、自分だけ特別扱いされたがっている。
【人を操る禁断の文章術】第4章(続きはこちら)
続きの4章以降はこちらで要約しています。